「うっわー、もしかして邪魔しちゃった?」
「えっ⁉︎そ、そんなんじゃ」
「そうだよ、だから帰れ。」
広田君が含みのある笑い方をしながら聞いてくる為、私は慌てて否定しようとしたがそれを須藤君のイラついた声が阻止する。
そんな須藤君をおかまいなしで広田君はズカズカと部屋に入って来て隅に座っては、
「まぁ、おれ達の事は居ないものだと思って、続けて!」
「ふざけてんじゃねぇぞ、真純。」
「ごめんね、小鳥遊さん…」
今にも須藤君と広田君が喧嘩を始めそうなのを止めながら一条君は私に申し訳なさそうに謝る。
いや、もう、いいよ…。
何か一瞬でさっきのドキドキ消えたし…。
そう思い私が苦笑いで返していると、広田君が私の近くに来て、
「美沙子ちゃん、キスしたの?彼方のキスどうだった?」
「へっ⁉︎し、してないから!」
「えー、何真っ赤になっちゃってー。ヨすぎて思い出しちゃったの?」
「ち、違っ」
「真純、いい加減にしろ。」
私に言い寄ってくる広田君の襟首を掴んで私から引き剥がしながら言う須藤君の表情は大分怒っている。
ど、どうしよう…広田君の言葉でさっきの事を思い出してしまった…!
「えー、じゃぁ彼方はどうだった?」
「煩い、帰れ。」
「帰ります!」
「え?…美沙子?」
私は恥ずかしくなり自分の荷物を急いで持って部屋を出る。
玄関で須藤君に手を掴まれ、美沙子に言ったんじゃない、と真っ直ぐに見て言われたが私は視線を彷徨わせながら、
「きゅ、急用思い出したから!後は、3人で楽しんで!じゃっ!」
そう言って私は須藤君に掴まれた手を振りほどいて須藤君の家を急いで出た。
私は自転車に跨って、勢いよくペダルを漕ぐ。
あ、明日からどんな顔をして須藤君と会えば良いんだーー!