-- ピンポーン
私は驚いてビクッと肩を震わせ、ゆっくりと目を開ける。
するとそこには眉間に皺を寄せた須藤君の顔が近くにある。
ち、近いよ…て言うかお客さん?だよね…?
「須藤君、誰か来」
「美沙子、目瞑って。」
「へ?」
「居留守使えば良いから。目、瞑って。」
至近距離で真剣な瞳で言われてしまえば、ノーとは言えない。
私は須藤君に言われるがまま、再び目を瞑る。
そうすればまた須藤君の存在が私の顔の近くに来る。
と、とうとう…!
-- ピンポン ピンポーン
再びインターフォンが鳴り、近づいてきていた須藤君の存在がピタリと止まる。
そしてその後、しつこいくらいにインターフォンが鳴り続く。
目を開けて須藤君の顔を見てみれば、イラついていて、舌打ちをした後、勢いよく部屋を出て行った。
…よ、良かった…のか?
私が、はぁと大きなため息をついていると、廊下から話し声が聞こえて来て、こちらの部屋に近づいて来る。
…聞いた事ある声がするぞ…。
「だってさー、彼方が勝手に帰ってるからー…って、え⁉︎美沙子ちゃん⁉︎」
「ど、どうも…」
「え?何で?え、ちょっと彼方⁉︎」
1人で喋りながら部屋に入って来て騒ぎ出したのは勿論、広田君で。
その後から申し訳なさそうに部屋を覗く一条君。
そして1番後ろにいる須藤君はいつもより低い声で、だから帰れって言ったんだよ、と不機嫌そうに言った。