少し落ち込んでいる時、玄関の辺りでガチャガチャと音が鳴る。
…え?え?もしかして親御さん⁉︎
あれ⁉︎共働きで夜まで帰って来ないんじゃなかったっけ⁉︎
ど、どうしよう!隠れる場所なんて無いし…!
私があたふたと焦っているのなんてお構いなしに足音がこちらに近づいてくる。
通り過ぎますように…!という私の願いは虚しく足音は部屋の前で止まる。
そして勢いよく開かれた扉の先には、金髪で人相の悪い男の人が立っていた。
え…?もしかして…この人…
「テメェ、誰だ?」
「は…えっと…」
「誰だって聞いてんだろうが!」
「千尋、うるさい。」
先程までベッドに寝ていた須藤君は体を少し起こして迷惑そうに言った。
いやそれよりも、重大な事がある。
今、千尋って言ったよね、この男の人に千尋って言ったよね!
やばいやばいやばい、遂に噂の赤松千尋と対面してしまったぁぁぁ。
「お前何勝手に人の家に上がり込んでんだよ?」
「は、はひ…ごめんなさい…」
そう言って睨みながら私に近づいて来る。
いやいや、貴方も人の家にズカズカと入り込んでるんですけどね!
なんて事は勿論言えるはずもなく、私は一歩ずつ後ずさる。
「帰れ。」
「…へ?」
「帰れっつってんのが聞こえねーのか?」
身長の高い赤松千尋に見下ろされながらイライラした声で言われる。