あれから何週間か経ち、世間は夏休み真っ只中。

時が経ちあの出来事は段々記憶が薄れていく一方、私の須藤君に対する想いは増していくばかりだった。

そして今日は夏休みが始まって、初めて須藤君と会う約束をしている。

というよりも、付き合って初めて学校の外で会う。

しかし、約束の時間になっても待ち合わせ場所に姿を現さない。

最初っから遅刻ですか…へぇ…。

まぁ、時間きっちりに来るタイプでは無さそうだけど。

ため息をつきながら携帯をチェックするが連絡の1つも無い。

まさか、ドタキャン⁉︎約束してたの忘れてたとか⁉︎

そんな事を思っていると丁度携帯に着信が入る。

画面を見てみれば、須藤君、の文字。







「もしもし⁉︎須藤君⁉︎何してるの⁉︎」

「…美沙子…」

「須藤君?…どうしたの?」

「ごめん…今日行けない…」







私は自分が外に居るという事を忘れて、え⁉︎、と大声を出す。

そうすれば周りの人はチラチラとこちらを見る。

私はその場から少し離れながら小声で電話越しの須藤君に問いかける。







「来れないって、何で?」

「…熱、出た…」

「え?大丈夫なの?行こうか⁉︎」

「…いい。」

「え、でも」






私が喋っている最中にブチッと電話が切れる。

なっ!切った!切りやがった!

そりゃしんどいのかもしれないけど、私だってお洒落して楽しみにして来たのに!

こうなったら何が何でも須藤君の家に行ってやる。

そう思い私は携帯を操作し、連絡先から1人の名前を引っ張り出す。

着信ボタンを押し耳元に携帯を当てるとプルルと機械音が私の中に響き渡る。

そして何回目かの呼び出し音が切れ、もしもし、と落ち着いた声が聞こえた。






「もしもし!一条君!」

「どうしたの、小鳥遊さん?」

「須藤君の家の住所教えて!」







私がそう言うと電話の向こうの一条君は、え…?と間抜けな声を出した。