「あの、美沙子ちゃん、今の忘れ」

「此処に居たの…。」










私の後ろから声がする。

声がした方向を見てみれば、息を少し切らしながら立っている須藤君の姿があった。










「携帯、さっき鳴らしたんだけど。」

「え?あ…御免…」










私はそう言いながら鞄から携帯を取り出し、画面を見てみると須藤君から何回か着信が入っていた。

話に夢中になって気付かなかった…。










「帰ろ。」

「え、あ…うん。一条君、広田君ありがとう。またね。」










そう言いながら座っている私の腕を引っ張り上げて早足で歩こうとする須藤君。

私は慌てて鞄を持ちながら一条君と広田君にお礼を言う。

そんな私を見て2人は苦笑いをしながら手を振って見送ってくれた。

校門を抜けた頃、少し歩くスピードを緩めた須藤君は私の腕から手を離した。










「御免。突然、千尋の担任に捕まって…」

「赤松…君の?」

「うん、俺が千尋の幼馴染って知ってるから。」

「そうなんだ…」

「このままだと留年するから連れて来いって話を永遠にされてさ。」










先程までの光景を思い出したのか須藤君はため息をつく。

まぁ、それで連絡出来なくて遅くなったんだったら仕方がないよね…。