「須藤君ー!」
家を出てすぐの所で後ろから呼ばれる。
パタパタと俺の元に走って来る美沙子。
「どうしたの。…忘れ物でもしてた?」
「ううん、途中まで送ろうと思って。」
「そんなのいいのに。」
俺はそう言いながらも後を追って来てくれた事に嬉しくて、美沙子の手を取る。
そうすると美沙子は、へへっと照れながらも握り返してくれる。
「お母さん、いい人で良かった。」
「うん、あれは大分須藤君の事気に入ってたね…」
「嫌われなくて良かった。」
「嫌う事は無いから大丈夫だって!」
自信満々に言う美沙子に俺は、ありがと、と言って微笑む。
大通りに出た所で、美沙子の手を離す。
「ここまでで大丈夫だから。」
「…そう?ごめんね、ここまでで。」
「美沙子が謝る事じゃないから。」
俺はそう言って帰ろうとしたの時、須藤君!と呼び止められる。
どうしたんだろうと思い美沙子の顔を見ていると、何か言いたそうに口をもごもこさせている。
「どうしたの?」
「あ…あの、あのね」
「ん?」
「あの…その、嫌じゃ、なかったから!」
「?」
「その…須藤君に、触られた…事…」
顔を真っ赤にしながら段々と小さくなっていく声。
…ああ、もう。本当に分かっていない。
今度は絶対に我慢してやらない。
「その、えっと…だから…」
「美沙子。」
「…ん?」
「続きはまた今度ね。」
耳元でそう言うと、美沙子は目を大きく開きより顔を真っ赤にさせて後ずさる。
その光景に俺はクスッと笑った後、じゃぁまた明日。と言って家の方向に歩き出す。
嫌じゃなかった、とか言われたら凄く嬉しい。
玉子買って帰るつもりなかったけど、気分良いし買って帰るかな---。