「あ、彼方ー?今何処に居るの?」

「何。」

「今日夕御飯いるの?」

「いるけど。」

「いつ帰って来る?玉子買って帰って来てほしいんだけど。」









今日は母さんが仕事が休みで父さんも帰って来るの早い日って言ってたな…。

て事はもう晩飯の用意始めてるだろうから、買って帰るならそろそろ出ないとダメだろうな。









「いつになるか分からない。」

「えー?寄り道してないで買って帰って来てね、じゃ。」

「え?ちょっと」










ブチッと一方的に切られた電話にため息が出る。

ポケットに携帯をしまい、美沙子が居るリビングに戻る。










「大丈夫?もう帰る?」

「ううん、大丈夫。」

「…そう?」










あまり居座るのは良くないが、もう少し美沙子と一緒に居たい俺はリビングで美沙子と母親と3人で世間話に花を咲かせた。

気付けば17時過ぎになっており、晩飯の準備とかあるだろうと思い、俺はおいとまする事にした。










「遅くまで居座ってすみませんでした。」

「いいのいいの。また来てね。」

「ありがとうございます。」

「お母さんにも遅くまで引き止めてごめんなさいって言っておいてね。」









ふわりと笑う顔は、美沙子の顔と重なる。

電話の内容がなんとなく分かっているようだったので、何処の母親も考える事は一緒なんだろうなと思った。

俺はもう一度お礼を言って、美沙子の家を出た。