美沙子は本当に分かっていない。
俺の家でキスしようとしたあの日から1度も美沙子を家にあげていない理由を。
俺が出来るだけ人気の無い所で2人っきりにならないようにしている事を。
俺がどれだけ我慢しているかを。
それなのに上目遣いでお願いしてくるなんて…
しかもその内容が、美沙子の部屋に来て…って、これはもう確実に襲う自信しかない。
「お母さん…家に居るんだっけ。」
「…?うん、パートから帰ってるはずだけど?」
「…そう…。」
家の人が居るなら襲う事もないだろうけど、でもやはりこの状態で会うのはマズイ。
なんなら付き合う事を反対される可能性だって出てくる。
俺が悩みながらため息をつくと、
「そんなに…来るの嫌…?」
「嫌…とかじゃなくて…」
寂しそうな顔をしながら聞く美沙子。
そんな顔をさせたいわけじゃないのに…。
俺は覚悟を決め、ギュッと繋いでいる手に力を入れて、
「分かった。お邪魔してもいい?」
「…うん!」
満面の笑みで頷く彼女はとても可愛い。
本当に俺は美沙子の事になると、とてつもなく弱く、甘くなるんだ。