「待ってよ、雨弥ちゃんー。」

「……」








あたしの肩を掴んでるのは勿論広田真純で。

触るな、と今すぐにでも怒鳴りたい。

しかしそう、今あたしは雨弥なんだ。

ここは笑って、穏やかに…










「こんな所で会えるなんて運命だねぇ、一緒にサボろうよー。」

「…離せ。」

「え?」

「いつまで肩掴んでんだ。汚い手であたしに触ってんじゃねーよ!」









あたしは肩に乗っていた広田真純の手を思いっきり振り払い走る。

廊下の角を曲がり、広田真純が見えない所まで来るとスピードを緩め歩く。

気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!

何が一緒にサボろうよー、だよ!

女とキスしてる所見られてよくあんな平然としていられるな。

あいつは女だったら誰でもいいんだ、だから男って気持ちわ









「奏羅ちゃん!待って!」

「…一条。…ついてくんな。」

「いやぁ…奏羅ちゃん足速いね。」









あたしの話しなんか全く聞かず、隣に並んで歩く。

何で追いかけてくんだよ…気持ち悪い。









「教室に行くの?」

「別に何処だっていいだろ。」

「教室まで送るから。」

「はぁ?」

「1人だと他校生に絡まれるでしょ?」








心配そうに言う一条の言葉にあたしはピタリと足を止める。