「あの2人には幸せになってもらいたい。」
「気持ち悪くないの?」
「…あの2人は思い合ってるから。」
「そっか…」
そう言った後、一条は黙り込む。
な、何だよ。さっきまでペラペラグイグイとあたしに話し掛けて来たくせに…!
そう心の中で悪態をついていると、隣から手が伸びて来てあたしの頭を撫でる。
「なっ!何して」
「大丈夫だよ。いつか奏羅ちゃんだけを愛してくれる人が現れるよ。」
あたしの頭を撫でながら一条は優しく微笑みながら言う。
その光景にあたしは恥ずかしくなり、バッと立ち上がり歩き出す。
何で…あいつにあんな事言われないといけないんだ…!
分かってる、分かってるつーの!
一条なんかに言われなくても、ちゃんとあたしだけを愛してくれる人を見つけるし。
そんな男の人居てくれるか分からないけど…
「待って。教室戻るの?」
「着いてくんな。」
「いや、そういうわけにはいかないでしょ。」
あたしの後を着いて来る一条に、キモイと言っても全く気にした様子も無く、やはり着いて来る。
あたしなんか構ってないで早く暴力男の所に行けよ…!
そう思いながら早歩きでズンズンと歩いていると、物陰から話し声が聞こえて来る。
「ちょっと、まっすー!こんな所でスるのー?」
「うん、人来ないし大丈夫だから♪」
あたしはピタリと立ち止まり、こんな所で何してんだと思い物陰を覗くとそこには、男と女が口付けをしている姿目に入る。
しかも、男というのがあの、広田真純なわけで。
口付けの最中の広田真純と目が合ってしまい、あたしは素早く顔を逸らし見なかった事にしてその場を立ち去ろうとすると、
「あれー?雨弥ちゃん、どうしたのー?」
「……」
「真純、何してるのこんな所で…」
「あれ、ナオが一緒って珍しいね。」
あたしの少し後に覗いた一条はどうやらさっきのキスシーンを見ていないようだ。
あたしはチラリと女の子を見てみると、女の子は凄い形相であたしの事を睨んでいる。
何であたしが睨まれないといけないんだよ…!
あたしは腹が立って今度こそその場を立ち去ろうとした時、肩を掴まれる。