「斎藤は俺達のことが嫌いなのか?」
斎藤は出会った頃からあからさまに俺達を毛嫌いしている
稽古の時だって殺気を含めている
「永倉さん、遅くなると皆が心配してしまうので帰りましょう。」
「……(答える気なしか)。」
ため息を一つ漏らしこれ以上問いかけるのをやめ屯所へと戻った
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屯所へと戻ると俺はすぐさま山南さんの部屋へと向かった
声をかけるのを忘れて静かに部屋の中へと入った
「失礼するぜ。」
「……っ!良かったー…、永倉さんでしたか…。」
俺は一瞬目を疑った
「………。」
「どうかしました?」
「…わりぃ。」
彼女はあんなに怯えてたのに笑うようになりとても明るくなってた
俺が月子の変わりように唖然としたのを見た山南さんは笑った
「月子さんに喜怒哀楽の"喜"と"楽"を教えました。彼女は賢いですね。飲み込みが良くて私は嬉しかったですよ。」
山南さんは月子の頭を優しく撫でる
月子は少し頬を赤らめて嬉しそうに笑っていた
「えへへ。山南さんの教えが良かったので。」
「…そうか。良かったな、月子。」
「はい!そうだ、永倉さんこれあげます。」
月子は俺のところまで歩み寄ると手に何かを握らせた
「これは…?」
手のひらを見てみるとそこには千代紙で折った金魚があった
「永倉さんに折ろうと思って、山南さんに教えてもらいました!嬉しくない…ですか?」
俺を見上げるような感じで見てきた
その目はとても不安そうで今にも泣きそうだった
それが堪らなく愛おしく感じて抱きしめた
「きゃ…!」
「ありがとう、すげーっ嬉しい…。」
月子の背中に手を回し抱きしめる力を強めた