おばあさんは私を見るなり目を丸くして「おや」と言った。


「こんなに可愛らしいお嬢さんがこの家にいるなんてねエ」


おばあさんは不思議そうな顔をした。


「ここは小人どもの家だろう?

あいつらはどうしたんだい?」


「今、仕事に行っているんです」


「じゃあお嬢さんはここで何をしているんだい?」


まさか、王妃から逃げてきて匿ってもらっています、なんて言えるわけがない。


「ここに住まわせてもらってるんです」とだけ言った。


「へエ、そうかい」


おばあさんはそれ以上詮索することなくにっこり笑った。


「お嬢さんがこんな森の中でなんてさぞかし大変だろう」


そういうとおばあさんは手に持っていた籠から何かを取り出した。


「じゃあ、お嬢さんにこれをやるよ」


それは、赤々としたリンゴだった。


「わあ、美味しそう!」


おばあさんは「そうだろう、そうだろう」と嬉しそうに言った。


「ぜひ食べておくれ」


「ええ、ありがとう」


私はにこっと笑った。


「後でいただきます」


「いや、今お食べよ」


おばあさんは食い気味にそう言った。


「え、あ、今、ですか」


「そうさ」


おばあさんは頷いた。