目を開けると、そこはどこかの家の中のようで。


『どこ、ここ…』


体を起こして辺りを見渡しても、よく分からない。



『あ、起きた?』


不安と恐怖でいっぱいだった私に温かいスープを持ってきてくれたのが、翠くんだった。



思い出して、頬が緩む。


「優しかったなあ」


洗濯物を干しながら、呟いた。


あの時私を抱き留めてくれなかったら。


私をこの家に招き入れてくれなかったら。


私は、どうなっていただろうか。


狩猟の人が言ったみたいに、死んでしまったかもしれない。


「命の恩人だなあ」


翠くんも、他の小人たちも。


みんな、それぞれに個性が豊かだけど、やさしい。


やさしさが胸にじーんと染み渡る。


「ほんと、いい人達」


継母である王妃に命を狙われていること、そのために森に捨てられたこと。


それを話すと、みんなは、家事をすることを条件に私をここで匿ってくれた。


守ると言ってくれた。


ここにいていいと言ってくれた。


優しい、優しすぎる。


私はその思いに応えたいと思った。


大してできることなんてないけれど、それでも。


リビングを掃除しているとふと落ちているものに気づき、そっと拾い上げる。


「あ、これ翠くんのだ」


いつも翠くんが左腕につけている、やさしい翠色のベルトの腕時計。