長いスカートの裾を持ちながら、道なき道を走る。


雲1つない満月の夜、周りのようすを見ることは可能だった。


歌声を必死で追いかけると、遠くに揺れる光が見えた。


暖かいオレンジの、ランプの光だった。


同時に人の姿も見えた。


6、7人くらいだろうか、予想していたよりずっとたくさんの人がいる。


この人達についていけば、どこかの集落に、もしかしたらどこか安全に寝泊まりできる場所に辿り着けるかもしれない。


その光を見失わないように、だけど見つからないように、こっそり後をついていくことにした。


こっそり後をつけたつもりだったのに。


『なあ、オレ達に何か用?』


急に振り替えって私の方にランプを向け、そう言った。


『バレてないとか思ってたのかもしれないけどー』


『俺らにはバレバレだから』


こちらに向いている顔は全部、怖い顔、妖艶な顔だった。


『もう一度聞くけど、オレ達に何の用?』


武器を構え、舌なめずりをして、狩ることが楽しくて仕方がない。


そんな、顔。


『助けて』


口から出たのはそんな情けなくか細い言葉だった。


その時ぐわりと視界は揺れた。


徐々に距離を詰めてくる人々、暗い森の中でランプの灯りだけが浮かぶ。


怖い、助けて、殺される。


ぐわり、ぐわり。


視界は揺れて、回る。


思考回路は、停止した。


ふっと体から力が抜けたその時、誰かに抱き止められたような心地がした。


誰、そう尋ねることすらできなくて。


ただ、覚えているのは。


『大丈夫?!』


最後に聞こえた、優しい声だけ。