朝食を終えて部屋に戻ると唯がベッドの上に座り真剣な表情で軽井沢の旅行ブックを読んでいた。


「行きたいとこ決まった?」


唯の隣に座りながら尋ねると唯は首を軽く横に振った。


「いろいろありすぎちゃって。美術館にも行きたいし、ここのパンケーキ屋さんも行きたいし、あとここのお店!ジャージー牛のハンバーグも食べたいし…。あとお土産屋さんにも行かなきゃ!」


行きたいところが複数あって興奮している唯に笑いが溢れる。


「時間はいっぱいあるんだからそう焦んないで。唯が行きたいとこひとつひとつ廻っていこう」


「 えっ…。上原くん、一緒に行ってくれるの?」


唯が不思議そうな顔をして聞いてきた。


俺が唯をひとりきりにして軽井沢観光なんてさせる訳ないのに。


「俺は最初からそのつもりだったけど?軽井沢デート、しよう」


「でも…!いいの?」


「唯は嫌なの?」


俺は知っている。こういう聞き方をすれば唯は俺を拒否することなんてないんだ。


コクリと小さく頷く彼女の手を握ると、唯は嬉しそうに微笑んだ。