「あっ、唯ちゃん。お疲れさま。何か一杯奢るからそこ座りなよ」


バイトの就業時間になった彼女は先ほどまで後ろで結っていた髪を下ろしていた。


へぇ、綺麗な髪だな。今まで一回も染めたこともないのだろう。痛みのない綺麗な髪だった。


「えっ、でも…」


律が指を差した俺の隣の椅子に座るのを何故か躊躇っている彼女に「どうぞ」と椅子を引いて座るように促す。


ぎこちない動作で座る彼女。


「何飲む?何でも好きなの言って。俺の奢りだから」


「そんなっ!悪いですよ!」


あたふたとブンブンと首を振る彼女、


いちいち動作が面白い。それが新鮮だった。今まで俺の周りにはいないタイプだな。


「唯ちゃん。バイトお疲れさま」


「ありがとうござい…。えっ、なんで名前知ってるんですか?」


「さっき仁奈と律から聞いた。働き者でしっかり者、とっても良い子だって俺に売り込んできた」


そう言うとまたしても顔を赤くする彼女。


瞬間湯沸かし器みたいだ。