あの願い事を由香里に知られるのも恥ずかしい。


それに俺の心の中に目の前にいる由香里がまだいるから、その願い事を口にするのを少し躊躇てしまう。


でも由香里は頑固なところもあって、教えないと引かないだろうなと大きくため息を吐く。


「唯が、幸せになるようにって…」


部屋の中にいる唯に聞かれないように小声でボソッと呟く。


「ふ〜ん。そうなんだぁ。哲らしいね」


「言ったからいいだろ。早く戻れ」


昼間、由香里にやられたように今度は俺が由香里にシッシッと追い出した。


由香里がいなくなって、唯の寝ているベッドに腰をかけてそっとその柔らかい髪に触れる。


「由香里だったよ。唯、疲れてるだろうから、寝てることにしたけど」


「そっか、ありがとう…。ねぇ、上原くん」


「なに?」


「上原くんの願い事ってなに?」


由香里と同じ質問で、もしかしたらさっきの会話が唯に聞こえたのかもしれない。