「唯!」


俺が名前を呼ぶとようやく安堵の表情を見せる唯。


おまえじゃ唯にそんな顔をさせることは出来ないんだよ、と心の中で悪態を吐きながら男を睨む。


「あっ、彼氏?ごめんね、それじゃあ」


わざわざナンパで彼氏付きの子にしつこく粘ることはなく、男は俺を見るなり早々に立ち去った。


「ありがとう。上原くん」


「………唯はさ、隙がありすぎるんだよ」


「………ごめん、なさい」


イライラする資格なんて、俺にはないのに。


唯が好きで、でもまだ心の中には由香里もいる。


そんな中途半端な気持ちな俺に嫉妬する資格なんてないのに。


「悪い。言い過ぎた」


「ううん」


「でもさ、自覚して。唯は可愛いから、他の男に狙われるよ」


割と真剣に伝えたにも関わらず唯は笑い声を出した。


「ふふっ、わたしのことそんな風に言ってくれるのは上原くんだけだから、大丈夫だよ」


あぁ、もうだから無自覚って怖い。