そして腕が解放されたと同時に俺は走り出した。


なんで俺は唯ちゃんを追いかけてるんだろう。


俺のことなんか見限ってくれればいい。切り捨ててくれればいい。


そう思うのにもう一度見てみたいと思ってしまう。


あんなウソで固められた笑顔ではない、初めて俺と会話したときに見せてくれたときのような純粋なあの笑顔を。


「唯ちゃん!待って!唯ちゃんっ!」


唯ちゃんの小さな背中を視界に捉えて思いっきり叫ぶ。


こんなに叫んだの何年ぶりだろうか。


大きな声を出して気付いてるはずなのに唯ちゃんは振り向かずに歩き続ける。


「止まって、唯ちゃん!」


当たり前だけど脚の長さが全然違うからすぐに距離が縮まる。


「唯ちゃん!待って!唯ちゃん!……唯!!」


ようやく距離がゼロになって彼女の腕を掴んでその小さな身体を閉じ込める。