由香里の背中を見つめると、隣にいた唯が口を開いた。


「上原くん。由香里さんのところに行って」


「えっ?」


「由香里さん、今辛いんだよ。上原くんが側にいたら絶対に心強いと思うし」


確かに、由香里へはもう気持ちはないが、友達として今の由香里は心配だ。


「悪い」


唯との一年記念日に、唯に告白をしようと決めた日に、


違う女を追いかけている俺はやっぱり大バカ者だ。


「由香里!」


由香里の姿を捉えてそう名前を呼ぶと由香里は驚いた顔をして振り向いた。


「えっ!?哲!?なんでここに!?ってか唯ちゃんは!?」


「唯が由香里の側に行けって、おまえのことが心配なんだよ」


案の定由香里は涙を溜めていた。


「もう!なんでそうみんな優しいかな!」


「俺はいつも優しいだろ?」


「いや、違う。哲は唯ちゃんと付き合い出してから丸くなったんだよ。昔のアンタだったら絶対にわたしを追いかけてこないね!」


なんでそう言い切れるかな、と思いつつ妙に納得してしまう。


「あーあ!わたしも充じゃなくて哲を好きになればよかった!」


「えっ!?」


「うっそー!冗談だよ!」


一年前、そのセリフを聞いていたら俺は唯ではなく由香里の手を取っていたと思う。


でも、唯と出会ったら例えどんなヤツの手を取ったとしても、


俺はきっと何度でも唯に恋をするだろうな。