「やだよ。兄ちゃんのエロ話なんてキモくてムリ!その点、哲くんなら経験豊富だし、いろいろ参考にしたいし!」


雅也は目を輝かせて前のめりになりながら聞き出そうとしてるけれど、


正直、雅也に教えることなんて何ひとつない。


俺も今の雅也くらいのときにはもう既に遊んではいたけれど、それは彼女が好きだからでもなんでもなかった。


ただ、なんとなく。


言い寄られて好かれて、特に断る理由もなかったから。


「相手は雅也が好きな子?」


「俺?全然。まぁ可愛いし、付き合ってもいいかなって」


そう悪気もなくニカッと笑う雅也をみて昔の自分を思い出した。


「…後悔するぞ」


「後悔?」


「適当に遊んで好奇心を優先すると、いつか本当に好きな子が出来たとき必ず後悔するぞ」


唯と出会って唯の純粋でひたむきな想いを向けられて、いかに自分がちっぽけでくだらない恋愛ごっこをしてきたのかと。


「…哲くんも、後悔してるの?」


「そうだな…。してる、かもな…」


きっと唯にそう言ったら彼女は「そんな必要ないのに」と笑顔を見せるだろうけど。