帰りが車でなく歩きだったこと、それ以外はいつも通りの帰り道だった。

それが運のつきだったのだ。

私は不気味なものが母にも見えているのだと思っていた。



【前日】

『いつもこの人たちいるよねー、なんでいつも同じようなことしているんだろ?』

母は最初は冗談だと思ったのか

「さぁねぇ…。そうしないといけない理由があるのかもしれないわよー?」

と返してきた。

私は、お母さんは車を運転しているのだからしっかり見えてないのかと思い

『お母さんはいつも運転してるもんね!えっとねー、昨日は…』

と母にソレらがやっていたことを細かく説明していった。


ーーーーーー話を聞いていた母の手が震え始めたーーーーー


私は話に夢中になっていたけれどいつも相槌を打ってくれる母が相槌を打たないから、母の顔を見た。

話す前までは笑顔だった母の顔は険しく、そして少し悲しそうな顔をしていた。

小さな声で「姉さんに似たのね…」と聞こえたような気がした。

たった数十秒の沈黙は時が止まったように長く感じた。沈黙を破ったのは母だった。


「いい?ーー、こうゆうことは誰にも言ったらダメよ?」


私が頭の上ではてなマークを浮かべていると母は苦笑して私の頭を撫でながら

「いきなりごめんね?
びっくりするかもしれないけれど、お母さんにはあなたが見ている人たちが見えないの。特別な目を持ったのね。その特別な目のせいでつらいことがあるかもしれないけれど大切にしてほしいの。そのためにお母さんと見えるってことは秘密にしておきましょう。」


私はこの時、お母さんの言っていた言葉の意味を完全に理解できてなかった。


…アレの存在にも気づいていなかった。




((オカーサン、イタイ、ヨ。ドコ?オカーサン…メガミエナイ。…ケテ。…タスケ、テ。オカーサン、ドコ。コワイヨ。コワイヨ。…ダレカ…。))