「ねぇ、舞香は、部活何にするの?」



中学校の入学式が終わった日、親友の相川柊花が、私、中元舞香に問いかけた。



「私は、吹奏楽部にする!柊花は?」



「何も決めてなかったけど、私も吹奏楽部にしてもいい?」



「全然いいよ!!一緒に頑張ろうね!!」

私たちは、小学生の頃からの親友で、いつも2人でいた。



だから、同じ部活に入るのも、当然だと思った。



中学校にも慣れてきた5月、部活見学があった。



私と柊花は一緒に見て回って、



「やっぱり、吹奏楽部だね!!」



と笑い合った。
予定通り、私たち2人は吹奏楽部に入った。



先輩が、



「何の楽器がやりたい?」



と訊いてくれたから、私は



「サックスがいいです!」



と答えた。見た目もカッコよくて、小さい頃から憧れていた楽器だった。
だから、この楽器を演奏するために、吹奏楽部に入ったんだ。



「あ、じゃあ、私もそれで!いいよね?舞香?」



「うん!」



こうして、私たちは同じ吹奏楽部で、同じサックスを演奏することになった。

部活に入部してから2週間後、それぞれ、どの楽器が合うかをテストした。



サックスの中にも、いろいろ種類があるしね。



そして、私がバリトンサックス。



柊花がテナーサックスになった。



本当は、2人でやりたかったけど、仕方ないよね……。
同じサックスでも、音域が違うから、練習は一緒にできなかった。



その1ヶ月後、顧問の先生に呼ばれた。



「どうしたんですか?」



私が訊くと、先生は困ったような顔をして、



「あのね、3年生の子が、受験勉強でしばらく部活に来ないから、テナーサックスを演奏して欲しいの。バリトンサックスはひとつしかないし、先輩と交代しながら練習しても、上手になれないでしょう?バリトンサックスをもうひとつ買うまでだから。」



と言った。
私は、正直に言って嫌だった。



1ヶ月前は、柊花と一緒にやりたいって思ってたけど、バリトンサックスが上達してきた今は、他のことなんてやりたくなかった。



でも、顧問の先生は無理矢理、私にテナーサックスを演奏させた。



柊花と一緒に練習できるのは嬉しかった。



でも、途中からやり始めた私と、天才肌で何でもできる柊花とは、あまりにも差がありすぎて、楽しくなかった。
そして、体育祭の日に、吹奏楽部で校歌や国歌の生演奏をすることが決まった。



私は、必死で練習した。



柊花に追いつきたくて。



初めは嫌だったけど、上手くなりたくて、人一倍努力した。



体育祭で演奏する曲も完璧だった。



でも、本番当日。