[俺は一体……]

「……ってぇなぁ、てめぇェェ!!」

鈍い音が路地裏に響き渡る。

俺は倒れた。血の味がした。


目を覚ますと辺りは明るく、もう朝だった。
俺は路地裏の隅に横たわっていた。
起き上がろうとすると、全身に痛みがつたわった。
「くっ……」
なんとかして起き上がると、俺は手についた血を優しく撫でた。昨日は一体何があったのだろうか...。思い出せない。


「ニャー……」
猫の鳴き声がした。猫はやせ細っている。
よろよろと俺の方に向かってきた。
「近づくな、俺は何も持ってねぇ。」
俺は下を向いた。そして、その場に座った。

「ニャー……」
猫は俺の膝の上に乗ってきた。
「……おいッ!離れろッ……て、、」
手で振り払おうとした時、猫は目を瞑った。
俺の膝の上で。

まさかと思った。
(なんで、俺の膝の上で……死ぬんだよ!)
頭の中は混乱していたが、手は猫の体を揺すっていた。
「……おいっ!おいっ!起きろよッ!」
額からは汗が流れ、大声で叫んで、必死に声をかけた。

「……ニ、ニャー……、、、、、」
かすかな声が聞こえた。
「おいっ!目ぇ開けろッ!」
「ニャー……」
目をゆっくり開けた。

バタッ……

俺は安心して、思わず倒れた。
「……んだよ、生きてんじゃねぇか...びっくりさせんなよな。俺の膝の上で死なれたら困るぜ。」

俺は猫の頭を撫でた。
猫は俺をジーっと見つめている。物欲しそうに。
「悪ぃな。俺は何も持ってねぇし、お前を連れて帰る事もできねぇ。……俺には帰る場所がねぇんだ。」



「小鳥遊くん?小鳥遊くんだよね...?」
「……へっ、、?」

路地裏の先の歩道に1人の女子高生が立っていた。太陽の光が反射して顔が見えない。

「こんなところで何やってるの?」
こちらに向かってきた。
俺は動揺して、立てなかった。
でも、声は出た。






「……篠川...??」