「──…ねえ、すずくんっ。」




「ん?」




あの後も少しだけ他愛ない話をして、帰ろうとビニールシートをたたんでいると彼女が僕を呼んだ。





「…今週の土曜日空いてる?」





「土曜日?空いてるけど…。」





9月10日であるその日は、別に何の予定も入ってなかった。





首を傾げながらそう言うと沙月の顔が明るくなったのがわかる。






「じゃあさ、デートしようっ!!」




「…ああ、うん、…ん?え、デート?」





待って、おかしいよね。



うっかり聞き流すところだった。



思わず聞き返した僕に「私じゃ不満なの?」と彼女がむくれる。





「いや、不満とかじゃなくて…」





むしろ君みたいな美人とデートなんていったら世の中の男性は大喜びだと思うけど。





「じゃあなんで?彼女さんいないんだよね?」



「いなくっても君と僕は付き合ってないわけで。」



「えっ、関係あるの??」




「男女の友達はデートしないよ。」



「堅いなぁ〜、もう。」





畳むのを続行した僕を見て、彼女が肩をすくめた。




だって、僕みたいな平凡な男が沙月みたいな子とデートなんて申し訳なさすぎる。