「それで、僕は君に何ができるの。」




「何がって?」




「助けるってどんなことしたらいいのかなって。」




「あ、そっか。んー、そうだなあ。私のわがままを聞いてほしいなぁ。」





「…わがまま?」





それと彼女を助けることが繋がってるとは思えないんだけど。





思ってることがまた伝わったのか彼女が声を出して「ははっ!」と笑う。






「冗談だよ、そんなに怪訝そうな顔しないでってば。」





「僕、駆け引きとかできるほど器用じゃないからね。」




「知ってるよ〜、逆に嘘とかが上手い人の方があんまり信用できないもん。」





空を見上げて、ゆっくりと瞬きをした彼女が「でも」と声を出した。






「私の思い出を作ってほしいのは事実。それをわがままって言っただけ。」




「…思い出?」




「私だって何でこんな能力を持ったのかわからないんだもん、心当たりがあるとしたら後悔していることばっかりだからこうなったのかなって思ったの。」






沈みかけている月が最後の力で彼女を照らしたように見えて。





儚い彼女がまたも僕の瞳に映りだす。






「…私、今まですごい後悔ばっかりなの。いつだって、ああしたいこうしたいって思っても結局できなくて。…だから、その後悔を消して思い出を作れれば何かが変わると思ったの。」





「…そう、なんだ。」






そういえば、と今日松坂から聞いた話を思い出した。





『根っからの不登校だったらしい。』





彼女がどうなのかは知らないけれど、学校に行きたくても行けない人にはたくさん分類があるはずだ。





学校に行けない、みたいにそんな感じのことが1つ1つ後悔になっているのかも、しれない。