「あ、すずくんやっほー!」
もう既に開いていたドアを開けて屋上に入れば、沙月が笑顔を浮かべていた。
「もう来てたんだ。」
「今日は早めに来れたんだーっ、月も見えて来たから待っててもそんなに飽きないよ。」
フェンスに背中を寄りかからせて入って来たばかりの僕へと手招きをする。
月っていっても三日月だし…、たったそれだけで飽きずに待てるなんて珍しい。
最近の女子高校生がそんな風情を感じたりとかするんだ…。
若干驚きながらも近づくと「私普段暇だから。」って言われた。
「…なんで」
「え?すずくんがそれだけで待てるなんて…!!みたいな顔してたから」
「僕あんまり顔に感情が出ない方なんだけど」
「そうかなぁ、私結構わかるよ」
ふふっと声に出した彼女が僕の顔を覗き込む。
その瞬間、顔に熱が少しだけ集まってしまって自分でも、しまったと思った。
「ふふふ、やっぱりわかりやすいよ。すずくん。」
「…沙月にだけだよ。」
「え、照れる。」
「…。」