───────────……






やっと見えるようになってきた細い三日月が、西の空へ沈みそうになっている20時。





暗くなった世界に少しドキドキしながら、沙月から教えてもらった裏口にたどり着く。






ドアノブを持って少し強めに開けると、歪な音と共にドアが開いた。






本当に鍵壊れているんだ…、不用心だな。





なんて設備に文句を思いながら、足音を限りなく立てないように屋上へと階段を上がる。





私立とは言っても普通の高校だし、まだこの時間は先生達がいるからそこまでセキュリティが厳重ではないはず。




だけど、見回りの先生に出会ったらめんどくさい。






「…誰にも、会いませんように。」





…今日、僕はヘンテコなお願いばっかりしてる気がする。





昼間はさすがに困惑したけれど、松坂もあれ以上追及してこなかったしなんとか乗り切れたから良かったんだけど。





…正直、僕もこの不思議な関係をなんて呼んでいいか分かってないんだから困る。