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泣いていた沙月が落ち着く頃には、もう22時半の少し前になっていた。
最後は、やっぱり家族といるべきだろうという意志は2人とも変わっていなくて。
…2人で沙月の家まで歩く。
「ここまで感動的に別れといて悪魔の話が嘘だったら…、面白いよね。」
「そうだったらいいのに。」
「…本当ね。」
僕達の間で珍しく会話が少なかった。
こんな時なのに、くだらない話題しか思い浮かばなくて。
…あれでもない、これでもない、なんて悩んでしまう。
「ねえ、すずくん。」
「…なに。」
「…しっかり、生きてね。前向いて、笑顔で生きて。…それが、私の願い。私のこと安心させるくらい、幸せに生きてね。」
凜とした声だった。
静かな夜の街に一本芯が通るように、はっきりと。
「うん、約束する。」
それが君の願いなら、絶対に、…守るよ。
僕の言葉はいつも以上に強くって。
彼女は安心したように笑った。