泣く音だけが響いてた。



沙月が僕の言葉をなんて受け取ったのかは分からなかったけど、ただ涙を流していた。




震える体にそっと手を回して抱きしめた。




「…すずくんっ、……ありがとうっ…。」




彼女の震えた声が耳元で聞こえる。



儚く消えてしまいそうな彼女が、今目の前にいる。



その現実を確認するように、また少しだけ腕の力が強くなる。




「…月がっ、…綺麗、っ、ですねっ。」




その時、いつか僕が彼女に告げたフレーズが耳に入った。



それを聞いて、目に涙が溜まってしまう。



流さないように、静かに目を閉じて僕も呟いた。




「…僕の中で、…きっと、永遠にっ、この綺麗な月をっ、忘れない。…永遠に、月はっ、…綺麗なままだよっ…。」




『好きだ。』『愛してる。』その気持ちを表現する言葉はごまんとある。




だけど、やっぱり僕達には、…この言葉がきっと1番似合ってる。