いつもの決まり切ったセリフを言うと、照れるような表情をした。
だけど、って真っ直ぐな瞳が僕を見る。
「大袈裟なんかじゃないよ、すずくんはすっごくすっごく素敵な人だよ。」
「そうだと…、いいけどね。」
「それに、平凡だってすごく素敵なことなんだよ、私にとっては平凡は当たり前なんかじゃなくて奇跡だったから。…平凡でいられるって奇跡のような幸せなの。」
彼女の頭が僕の肩にそっと寄りかかる。
綺麗な黒髪が穏やかな風に、静かに揺られた。
僕は沙月の言葉に、思わず泣きそうになって。
息を吸い込むのに精一杯だった。
「…あるよ、僕の唯一の特別。」
「…なに?」
いっぱいいっぱいの中、震えてしまいそうな唇を動かす。