そんな風にぼやぼやと歩いていれば、いつもは遠いのに今日はすっごく早く学校についてしまった。
…本当、こういう時くらいもっと時間がゆっくりになればいいのに。
しぃっと人差し指を口元に当ててはにかむ君は綺麗すぎて。
僕から言葉を奪うには十分だった。
ひっそりと階段を上がって、屋上へとのぼる。
ギィっなんて言って扉の開く古びた音すらも心地よく感じた。
「やっぱり、ここが1番思い出があるかも。」
「…どうして?」
「だって、すずくんが私のことを見つけてくれたから。」
真っ暗な夜の中、屋上に2人きり。
僕らのあの不思議な出会いはここで。
…毎日のようにここで日々を積み重ねていた。
「そうだね、僕もやっぱりここが1番思い出深いな。」
最初に出会った時に沙月がいた場所へ視線を向ける。