彼女の言葉にぼんやりと思い描く。



死ぬ前に食べてみたいもの、か。…なんだろうな。




「あー、母さんのオムライスかもしれない。」



「オムライス?好きなの?」



「オムライス自体は好きっていえば好きだけど、母さんのオムライスだけは絶品なんだ。」



「へーっ、美味しそうっ。お母さんの手作りもいいよねっ。」




沙月の言葉に、小さく頷く。



ちょっとマザコンぽくて抵抗はあるけど、素直にそれが食べたいって思った。



ベタだとしても、自分の生まれた場所の味が好きなんだろう。




「そうだね、うん。…私も、今日の本当に最後はお家に帰るね。」



「……うん、それが、いいかもね。」




沙月の弱々しい台詞に同意すれば、寂しそうに笑う。



朝から一緒にいたのにまだ足りないなんて思ってしまうのは、…きっとわがままだ。