懸命に記憶を漁る。


その中から、小学校のときのものだけを繋ぎ合わせていくと…


「もしかして…新ちゃん?」


「あ、やっと気づいた?」


紅真くんの嬉しそうな声に、新ちゃんが迷惑そうな顔をした。


「うっそー!?」


あまりの驚きに、椅子をがたんと倒してしまった。


幸い、教室にあまり人はいなかったから注目の的になることはなかった。


けど…


「いや、詐欺でしょ…」


信じられないよ…。


「ほんとに新ちゃん?」


「ああ」


目も合わさずに平然と短く言い放つ。


「ねぇ、十波…話が飲めないんだけど…。」


一人だけ置き去りにされている七ちゃんが、私のブレザーの裾を引っ張る。


「ごめんね。こっちの軽そうな男の子が、一ノ崎 紅真(いちのざきこうま)くん。」


「え、十波その紹介酷くない?」


「で、こっちの眠そうな男の子が九重 新也(ここのえしんや)くん。」


傷ついたように肩をがっくりさせる紅真くんを無視して、私は手短に紹介を終えた。