が……

俺はその手をやんわりと押し戻した。
努めて冷淡に彼女を見返す。

危なかった。左手のハート型クッション(仮想トーコ)を握りしめる。

「しっかりしろ。…君はな、俺が好きなんじゃない。
珍しく撥ね付けられて、ショックを受けただけだ」

彼女の顔つきが強張り、慌ただしく捲し立て始めた。

「ち、違うわ!間違いなく貴方なの。
貴方が言った通り、私と貴方は良く似ている…きっと誰より分かり合えるわ。
少なくとも、赤野燈子より。
今だって。
…貴方、とっても寂しい筈よ、私なら貴方を放っておかない」

「…君は燈子の替わりにはならない。
大体な、君が本当に俺を分かるなら、今俺がどれだけ困っているか分かるはずだろう?
君のソレは…自分本位の思い込みだ」

喋っているうちに段々と頭が冴えて、冷静さを取り戻した。

対する彼女の口調は熱をおび、余裕を失い出している。