―あの頃の、私の世界は白と黒

いつも人と距離を置いて、
友達と呼べる人なんて居なくて。

他人と仲良くなんてしちゃいけないんだと思ってた。








―私は…不幸を呼ぶ。
4月。
新学期が始まる。
入学式を終え、クラスが発表されている掲示板に自分の名前を見付ける。

一年五組…か。


北見小と北見東小。2校の小学校からの持ち上がりの生徒で成り立っている、この第三中学校は生徒のほとんどが顔見知りだ。

周りには同じクラスを喜ぶ女子のグループや好きな人とクラスが離れて落ち込んでいる人達。

そんな群れに私は背を向け、一人教室へと向かう。


風は気持ち良く、桜の舞う、例年と何等変わりのない、中一の春だった。


「え―――――――っ!!!裕芽(ユメ)ちゃんと翔(ショウ)ちゃんとクラス違うの――――――っ!!?」

廊下を歩いていると耳をつんざくような声が聞こえた。
声のする方に目をやると、背の高い男の子と女の子に背の小さい女の子。

「裕芽ちゃんと翔ちゃんと一緒のクラスじゃないなんてやだっやーだーよ――っ!!」
「しゃーないでしょっうっさいよ!!?りえ!!」
「まぁ裕芽ちゃんも落ち着いて…りえちゃんも、な?遊びに行くからさっ」
「あんたは黙ってなっ翔平(ショウヘイ)!あんたがそうやってりえを甘やかすからねぇっ」
「うあああぁぁんっだってだって裕芽ちゃんと翔ちゃんばっか同じクラスでさっそれでさっ」

『りえ』と呼ばれたその小さい女の子はまだ駄々をこねている。

…正直…欝陶しい…

こういうのはさっさと離れた方がいいなと思い再び歩き始めた。

―その瞬間
「うあぁんっ裕芽ちゃんと翔ちゃんの馬鹿ぁ―――っ!!阿呆ぉ―――――!!!」

泣きながら全速力で走ってくる大泣き大騒ぎ少女と…









ぶつかった。









「……っ」
思い切り跳ね飛ばされた私は近くの柱に頭をぶつけた。まだ肩にぶつかったあの子の感触が残っている。

新学期早々ツイてない

そう思って目を前方へとやると、反動で尻餅でもついたのだろうか。座りこんだあの子が、真ん丸な目をこちらへ向けている。


「………は!!!」
そう言って跳びはねる様に立ち上がると、慌ててこちらへ向かってくる。

「ご…っごめんなさいっ!!怪我っしてない!!?大丈夫!?」

眉を八の字にし、焦りながら聞いてくる。
ころころ表情の変わる子だなぁと思った。

「…別に…。…大丈…」
「りえっ!!」

「大丈夫」と言いかけた声に、『裕芽ちゃん』と呼ばれていた背の高い女の子の声が重なった。
こちらへと駆けてくる姿が見える。

「あっ裕芽ちゃぁんっ」
「あんった人様に迷惑かけないのっていっつも言ってるでしょっ!」
「はぁい…ごめんなさぁい…」

そんな様子を、少し眩しく思っていると、『裕芽ちゃん』の視線がこちらへと向いた。

「えっと…釧路(クシロ)さん…?だよね?」
確認するように曖昧な問い掛けを投げ掛けてくる。