「ハルって本当はユーレイじゃないよね」

私はハルの目を見据えた。

ハルは驚いたようで一瞬固まったけど、上体を起こしてニヒルに笑った。

「へえ、どうして?」

それは完全に私を馬鹿にしているような笑い方でもあった。


「…ハルには確かに触れられない。

空を掴むみたいに、風を掴むみたいに、絶対に触れられない」


私は手をぎゅっと握った。


「だけど、私、昨日ハルに触れた」


ハルは「何言ってんのさ」と立ち上がった。


「昨日、俺とみーちゃんは会ってないでしょ?昼休みだって会わなかったでしょ?いきなり何を言い出すのさ」

幻覚でも見たの?なんてハルは言う。


「昨日、夕方、大学病院の5階の病室で」


するとハルは目を見開いて驚きの顔をした。


「どうして、それを知っている…?」


低い声が聞こえた。


「私のお父さんが脳外科医だって、知ってるよね。

今、大学病院の5階で勤務してるんだ」


声が震えてしまわないように、まっすぐハルの目を見据えた。

ああ、怖い。

ハルの反応がとても気になるのに、それがすごく怖い。

矛盾を抱えたまま、私はまた話しだした。