「なずなちゃんって、萩原先輩のことが好きなんですか?」


「えっ、」


桃矢に好きな人の名前を聞かれ、恥ずかしくて秘密にしてしまった昨日のことを思い出した。

改めて聞かなくてもわかってるくせに。

先輩と仲良くなりたいって、彼女になりたいって、桃矢の前ではっきり言ったんだもん。


ここまでついて来られた時点で、秘密にするのはもうやめていた。

隠し通す方がもっと面倒になると思ったから。


「うん、好きだよ」


先輩はわたしの理想の王子様だもん。

優しくて、気が利いて、かっこよくて、笑顔が眩しくて。

好きにならずにはいられない、そんな素敵な人。


「そう、ですか……」


桃矢が力のない声を揺らした。


なんとなく傷ついたような横顔をしていたけれど、わたしは特に気にもしなかった。

だって、桃矢なら応援してくれるだろうと勝手に思い込んでいたから。