「えー、何言ってんの?なずなには既にいるじゃん。素敵な王子様」

「なんのこと?」


心当たりがなさすぎて首を傾げた。

そんなわたしの疑問を無くすべく「ほら、あそこ」と、箸でどこかを差している。


頭にはてなマークを浮かべながらも、くるりと振り返る。

蘭が示していた場所は教室の1番後ろの窓側の席だった。


あれ。

あの席ってたしか………。


「その名も、なずなの王子様!杉浦桃矢(スギウラトウヤ)くんでーす」


はっ、はぁ〜〜????


「ちょっ、ちょっと待って!さすがに“アレ”はありえないからっ!!」


何言ってるの!?と訴えながら、教室の隅でお弁当を食べている彼を思いっきり指差した。


「ひっ……!」


わたしのバカでかい声に驚いたのか、杉浦桃矢が持っていた箸をポロリと落としてしまったらしい。

情けない声が聞こえた。