「ごめんなさい。僕、好きな人がいるんです。……でも、ありがとうございました」
桃矢が申し訳なさそうに答える。
その言葉に、ピクリと肩が震えた。
好きな人………。
桃矢の、好きな人………。
「きゃああ!杉浦かっこいいー!」
「素敵ー!こっち向いてー!」
蓮先輩がステージにいたときと同じくらいの歓声が響く。
桃矢、大人気だな。
そりゃあそうだよね。あんなにかっこいいんだもん。
もしかしたら、これを機会に桃矢を好きになる子が増えるかもしれない。
そしたら桃矢は、わたしなんかより素敵な子を見つけて、離れてしまうかもしれない。
嫌だよ。
桃矢はわたしから離れちゃ嫌だ。