「ここでなずなちゃんをかっこよく慰めたら、また俺を好きになってくれるんじゃないかって少し思ったんだ」
え……?
隣に座る先輩に目を見張る。
けれど目が合うことはなく、先輩はそのまま言葉を紡いだ。
「でもさ。俺は、そんなことを望んでるわけじゃないから」
この場所から見える先輩の瞳はとても悲しげに見えるのに、どこか落ち着いていた。
先輩はちゃんと前に進んでいる。
後悔ばかり引きずってグズグズするわたしとは違うんだ。
「桃矢くんは待ってると思うよ。なずなちゃんの口から「好き」って言ってもらえるのを」
ようやく目が合った先輩は、とても穏やかな笑みを浮かべていた。
「先輩はどうしてそんなに優しいんですか…………」
わたしは、恐る恐る聞いた。
普通なら、ただのわがままで自分を振った相手に優しくなんてしない。
恨まれても仕方ないくらいのことをしたのに、先輩は今でもわたしを気にかけてくれる。
だからわたしは、何度でも甘えちゃうんだ。