「な、なずなちゃん……?」


桃矢がギョッと目を見開いた。


わたしには泣く資格も桃矢を責める資格だってないのに、なんでこうなるかな………。

ガタンッと椅子鳴らして立ち上がれば、焦る桃矢を見下ろした。


苦しい。

苦しい。

桃矢が好きで、苦しい。


「バカ………!」


そして、ついにコントロールできなくなった感情を吐き捨てて、逃げるように教室から飛び出した。


「なずな!」


後ろからわたしの名前を呼ぶ声が聞こえたけれど、知らないふりをしてとにかく走る。



散々桃矢のこと傷つけてきたくせに、今更何を言う。

逆ギレだ。わがままだ。最低だ。


でも、嫌だったの。


ようやく桃矢が好きだって気づいたから、先輩との仲を応援してほしくなかった。

今までずっと邪魔してきたくせに。


それなら、最後まで貫いてよ。


「応援なんて……しないでよっ…………!」