「僕はなずなちゃんを心配してあげてるんですよ?これ以上赤点を取らないように」

「なっ………万年赤点の桃矢に心配されたくないから……!」


「ふっ……そうですか。じゃあ、万年赤点の僕に心配されないよう、萩原先輩に勉強でも教えてもらったらどうですか?」


桃矢が吐いた思いがけない言葉に、喉の奥を詰まらせる。

前髪から覗く瞳があまりにも冷たいから、見ているだけで体が震えた。


やめてよ。

桃矢の口からそんな言葉聞きたくない。


けれど、どれほど必死に声を上げようとしても、わたしの喉は言うことを聞いてくれなかった。


「僕はどうせ何もできないヘタレですからね。なんなら今すぐ萩原先輩を呼びに行ってあげましょうか?」


桃矢の言葉が耳の奥に響いて痛い。

痛くて、痛くて、


「っ……」


ほろりと涙が零れ落ちた。