教室を出て行く先輩の背中を眺め続けて、見えなくなってからまた前を向いた。
手に残ったチョコレートを見ると、思わず顔が緩む。
「なずなちゃん、嬉しそうですね」
すると、しばらく黙ったままだった桃矢が落ち着いた声色でそう言った。
「そりゃあ、ずっと食べてみたかったやつだし、先輩からのプレゼントだし、嬉しいに決まってるじゃん」
「ふーん、そうですか」
わたしの言葉に対して、桃矢がいかにも納得してないような顔を浮かべている。
なんか不機嫌?
桃矢を無視して先輩と話してたから、怒ったとか?
ヤキモチと言えば聞こえはいいけれど、素直に喜べないのも確かだ。
もしかしたら先輩と別れたことを伝えていないせいで、何か勘違いしてるのかもしれない。
ちょうど2人きりだし、言うなら今だよね………!