返ってきたプリントは1問どころか全問書かれていて、この数秒の間にいったい何があったのか。
適当に書いたとは思えないほど、きっちりとした公式が並んでいた。
「数学苦手なくせに……なんで……」
「さぁ、なんででしょう?」
フッと、桃矢が柔らかく笑う。
この幼なじみは、いったいどれほど秘密を隠しているの?
小さい頃から今日までずっと一緒にいたあいつが、ひっそりと何かを隠しているなんて嫌になる。
好きだから、桃矢のことをもっともっと知りたいのに。
「………ヘタレのくせにムカつく」
そう言って、桃矢をジッと見つめた。
すると桃矢はいつものヘラヘラ笑顔を浮かべて「怒らないでくださいよ」と、言う。
その適当な態度がさらにわたしの怒りに触れることを、桃矢はたぶん気づいていない。