振り絞った声も虚しく、先生に届く前にどこかへ消えた。
異様に焦り始めるわたしを見て「どうしたんですか?」と、桃矢が首を傾げている。
「えっと、ちょうどわからない問題があってさ〜」
「なんだそんなことですか。きっとすぐ戻ってきますよ」
「う、うん」
………こいつの余裕ぶった表情、なんかムカつく。
わたしが桃矢を避けてたの知ってるくせに、どうしてそんなに平然としていられるの?
わたしのこと、もうどうでもよくなった?
聞くに聞けない感情が頭の中で渦巻いて、問題を解く手が進まない。
「…………」
もう一度、隣に座る桃矢をちらりと見てみた。
長すぎる前髪から覗く瞳は真剣さを帯びていて、その横顔にドキリと胸が高鳴る。
やだな……好きって自覚してから、桃矢が無性にかっこよく見えちゃう。
いつもの地味なままなのに、変だよ。