「なんだ、やっぱり桃矢くんも来てたんだ。前髪上げてると新鮮だね」
「やっぱりってなんですか。まるで僕が来るのをわかってたみたいな言い方ですね」
「わかってたよ。桃矢くんは俺となずなちゃんを2人にしておくわけないから」
バチバチと火の粉でも上がってきそうなほどの険悪ムードで、会話を続ける先輩と桃矢。
いつものわたしなら生意気な桃矢を叱っていたけれど、今日ばかりはそうもいかない。
嫌らしい感情ばかりが渦巻いて、口を開こうもすぐに閉じてしまう。
わたしは俯いたまま、2人の話を聞いた。
「僕がいるってわかっていたから、なずなちゃんを1人にさせたんですか?」
「何のこと?俺は飲み物を買いに行っただけだよ」
蓮先輩が「ほら」と、買ったばかりの缶ジュースを顔の横まで持ってくる。
わざと伏し目がちに逸らしても、2人の行動を随時確認してしまうから、あまり意味がない気がしてきた。