桃矢がこうして助けてくれるのは、わたしのことが好きだからで。

デートにこっそりついて来ちゃうくらいの重度な心配性。

蓮先輩という彼氏がいるにも関わらず、想ってくれている。


最初に好きだって言われたときは、無理矢理キスしてきたり強引だったから嫌だったけど、今ではそんな気持ちも消えていた。


桃矢がわたしを想ってくれているのが、純粋に嬉しい。

わたしがその想いに応えたら桃矢はいったいどんな顔をするんだろう。


「桃矢……」


息を吹くような弱々しい声で、桃矢の名前を呼んでみる。


「なんですか、なずなちゃん」


桃矢は目を細めて笑った。

その穏やかな笑みに、激しく鼓動が波を打つ。


幼なじみにドキドキする意味がわからなくて、この気持ちになんて名前をつければいいのか迷っていた。


蓮先輩と初めて会ったあの日と似ているけど似ていない、この不思議な感情。


たった一言口にしてしまえば、隠れている答えに辿り着けるような気がした。