「ん、別に……」


急に素直になるから、言われたわたしが恥ずかしい。


たとえ先輩の彼女になっても、桃矢が大切な幼なじみなのは変わらない。

当たり前のことなのに、言わなきゃわかんないわけ?


そう思ったけど、たぶんこれは独りよがりの勝手な思い込みなんだと気がついた。

言わないと伝わらないことだってある。

いくら幼なじみでも、以心伝心ができるわけじゃないんだ。


「照れた顔も可愛いですね」

「は?」


しかしこいつは、この落ち着いた空気もぶち壊してきた。


言葉遣いは丁寧なのに、わたしを見る顔はヘタレの面影を感じない。

余裕な笑みを浮かべて、戸惑うわたしを弄んでいる。


「……う、うるさい!」


どうやら最近のわたしは、こっちの桃矢にも弱いようです。