「そ、そんなぁ………」


けれど桃矢は、今にも泣きそうな瞳でわたしを見てきた。


「いい歳した男がこんなことで泣かないでよ」


今日は負けじと反論してみたけど、桃矢にわたしの言い分は通用しない。

寝癖のついた髪の毛をいじりながら、わざとらしくため息を吐かれた。


っこの………ため息吐きたいのはこっちの方だっての。

隣には先輩がいるんだから、変なところを見せたくないのに。


「……あー、もう!手伝ってあげるから教室行くよ!」

「なずなちゃん………!」


桃矢の腕を掴んだ瞬間、待ってましたと言わんばかりに、彼はキラキラと目を輝かせた。


あーあ、まんまと罠にハマっちゃったかな。


「というわけで先輩、すみませんが先に行きますね」

「わかった、お昼にまた会おうね」

「はい!」